志望校の選択は、誰しも迷うもの【1】 〜現状認識が正しい判断を可能にする〜
毎年、志望校を決める時期になると、夫婦の意見が食い違う家庭が出てきます。両親が常に同じ視点で我が子を見ているとは限りませんし、性格や資質、将来への期待などにもそれぞれの見解がありますから、意見が分かれることもあるでしょう。志望校の選択は大切な我が子の将来に影響する重要事項。多少時間がかかっても、この際忌憚の無い意見をぶつけ合い、とことん話し合って、双方とも納得のいく結論を導き出すべきです。受験に必ずしも熱心とは言えない父親でも、進学先には何らかの意見を持っていることが多いものなのですから。
しかし、なかには深刻なケースもあります。母親が挙げた志望校に対して、父親が「ここは良家の子女ばかり集まっている学校だから、敷居が高いよ」とか、「毎日そんなに勉強して塾へも行っているのに、もっと別の学校はないのか」と、自分が学生だった頃の(つまり10年も20年も前の古い)印象で独善的な意見を述べて否定する場合です。母親は、塾で話を聞いたり、書籍やインターネットで情報を集めたりして現状を把握し、子どもの様子を鑑みた上で志望校を絞り込んだのですから、受け入れる気にはなれません。とりわけ、日頃はほとんど口出しせず子育てや受験準備を母親に一任している場合には、母親の反発も強くなります。ぶつかり合うだけで実のある話し合いがないまま時が過ぎ、願書を取り寄せる頃になっても未定のままという、最悪の事態に陥ることさえあるようです。
十年一昔と言いますが、10年も経てば小学校の中身も変わります。例えば、こんなことも・・・。
A小学校に敏腕で知られる先生が校長に着任した。すると、その校長は教師を見る目があるから、優秀な教師を採用するようになった。優秀な教師が増えれば、学校の中身が良くなる。さらに、教師を選ぶ目を持つ校長は親に対しても目が利くから、良い親の子どもを合格させるようになる。「教師も良い、親も良い」となれば、学校は劇的に変わる。このようにして、A小学校は10年を待たず児童が一巡するわずか6年間で、高い評価を得る学校に変身した。
このように、例えそれまで評価の低い学校であっても、やり手の校長先生が一人赴任しただけで、数年後の状況は一変するものなのです。
実際、小学校受験を取り巻く環境はここ20年で様変わりしました。社会が大きく変化する中、伝統を重んじる学校もあれば、新しい考え方を積極的に取り入れる学校もあります。さらには、最新設備を備えた校舎で独自の教育を展開する新設校なども登場し、選択の幅はますます広がっています。にもかかわらず昔の印象に固執すれば、今現在評価が高く実績も上げている学校をレベルが低いと誤解したり、歴史の浅い学校を軽んじたりするかもしれません。現状を正しく把握しなければ、誤った選択をする危険は多いにあるのです。
例年この時期になると志望校に悩む両親から、「うちの子に合った学校は?」という質問が増えます。その割に、「B小学校が良いと思いますよ」とお勧めしても出願につながらないケースがままあるのは、依然として多くの方がブランドに縛られた考えを持っているからではないかと、とても残念に思います。<2007年6月14日掲載文>
〜次回の掲載は9月11日(木)の予定です〜