JAC幼児教育研究所

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仲間と一緒に育つ育てる "一緒に食べるとおいしいね!"

2014年5月26日 00:00

 「先生ボクね、大きいおにぎり持ってきたんだよ!」

 電車で遊んでいたケンちゃんが、私のところに来て言いました。
 「2つ入ってるんだよ!」

 まだ朝だというのに、子ども達は嬉しそうにお弁当の話をしてくれます。本当に楽しみなんですね。でも、ケンちゃんのことはちょっと心配でした。というのも、ケンちゃんは、先週、小さなおにぎりを2つようやく食べられるようになったばかり。なのにいきなり大きなおにぎりを2つもだなんて…。私の心配をよそに、ケンちゃんは特急電車を走らせて、満足そうに遊んでいます。

 その日、ケンちゃんはお名前を呼ばれると元気な声でしっかりとお返事をし、母の日のプレゼント作りも平均台のひこうき歩きも、1つ1つ丁寧に行い、いつもよりお兄さんになったようでした。

 さあ、お弁当の時間です。子ども達は手を洗うため順番に並びます。
 「今日のおべんとう、な〜にかな?」。
 私の問いかけに、「おにぎり!」「ハンバーグ!」「たまご焼き!」...と元気な声。
 みんな、とびきりの笑顔です。
 と、ケンちゃんが隣のお友達に言いました。「ボクのお弁当、大きいおにぎりが2こ入ってるんだ」。あーそうだった。大丈夫かしら?

 ジャックでは、お弁当の用意も子ども達の仕事。手を洗い終えた子から、みんなのテーブルを拭き、ランチョンマットを敷き、その上に、お弁当、コップ、お手拭き、フォークやお箸を並べます。
 リュックを棚に片付け、お弁当の歌を歌い、「いただきます」のごあいさつ。
 「どうぞ召し上がれ」の声を合図に、お弁当箱のフタが一斉に開き、笑顔があふれます。

 私は、気になっていたケンちゃんのお弁当を覗いてみました。いつもより大きなおにぎりが2つ見えます。
 
「先生、見て見て!」
 「わぁ〜おいしそう。頑張って食べようね」
 そうは言ったものの、果たして食べられるかしら...。案の上、ケンちゃんは途中から無口になっていきました。

 子ども達は、一人、二人と食べ終わり、空のお弁当箱を嬉しそうに見せています。そろそろ「ごちそうさま」の時間。ふとケンちゃんを見ると、やっぱり満腹の顔。
 「どう?食べられそう?続きはお家で食べる?」ケンちゃんは頷いて、お弁当箱を片付けました。

 その日の帰り、お母様に伺ってみました。お母様は、「食べられないんじゃない?って言ったんですけど、持って行くってきかないんですよ。先生みたいな大きなおにぎりにしてって言って...」とニッコリ。えっ?それってもしかして私の事?

 ケンちゃんは初めてお弁当を完食した日、次は私の食べていたおにぎりに挑戦したいと言い出したのだそうです。子どもって、思いも寄らない事に関心を持ち、挑戦しようと思うものなのですね。


 今、食育が注目されています。私達が常に願っているのは、"楽しく食べる子供" に育って欲しいということ。そのためには、食べる意欲が育つよう食事のリズムを作ること、食事の準備や調理に携わること、家族や仲間と一緒に食べる楽しさを味わうこと、が必要です。
 入会当初は緊張気味だった子ども達も、毎回自分でお弁当の準備をし、お友達と楽しく食べるうち、食に興味や関心が持てるようになっていきます。ご家庭では栄養バランスも大切ですが、キンダーでは "食べやすい大きさで無理のない量を楽しく食べること" を目標にしています。お母様が作って下さったお弁当を全部食べたという事実が、子どもの心に満足と安定をもたらし 次のステップへと進む大きな原動力となってくれるからです。

 それから一週間、山登りをして遊んでいたケンちゃんが私のところに来て言いました。
 「先生、今日のおにぎり何が入っていると思う?」
 「シャケかしら?」
 「残念!梅干しでした。すっぱいんだよ!」

 えっ?それって私のおにぎりの中身と同じじゃないの!今日も、ケンちゃんの挑戦は続いています。

 

 磯 三千穂 (浦和教室)

キーワード:育児