絵本紹介
絵本紹介
文 筒井 頼子
絵 林 明 子
福音館書店
山の見える街に引っ越してきた“かなえ’’は、引越しの最中に郵便が届く音に気づきます。お父さんもお母さんも「気のせいだ」と言いますが、玄関にはスミレの花束が落ちていました。
翌日はタンポポが3 本。その翌日には手紙が届きました。手紙には、「友だちはいいです。とても嬉しいです。待っています。」と、たどたどしい字で書かれていました。
翌日、また郵便の音がしました。急いで駆け出してドアを開けると、そこには知らない女の子の姿がありました。贈り物をくれたのは、その女の子でした。「遊びに行こう」女の子の声に、“かなえ’’はうなずき、にこっと笑いました。
子どもにとっても、引越しは大きなストレス。親は安易に考えがちですが、心に抱える不安は、小さな胸を押し潰しそうなくらいです。前半部での“かなえ”のどこか寂しそうな表情は、そんな繊細な心を見事に表現しています。一方、ラストシーンでは、眩しい笑顔を見せてくれます。『友だちっていいな』素直にそう思えるシーンです。
ちなみに、題名の「とん ことり」とは、贈り物が届いたときの音。優しい響きが胸に残ります。