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キャベツくん (年中)

キャベツくん (年中)

文・絵 長 新太
文研出版

あらすじ: キャベツくんとブタヤマさんが出会って…

ある晴れた日、“キャベツくん”は“ブタヤマさん”と出会います。
「こんにちは」と、元気に挨拶した“キャベツくん”でしたが、“ブタヤマさん”は「フー」と言うだけ。どうやら、とってもお腹がすいているようです。
「お腹がすいてフラフラなんだ。キャベツ、お前を食べる!」と、いきなりキャベツくんを捕まえた“ブタヤマさん”。ところが、冷静な“キャベツくん”は、慌てず騒がずこう言い返します。「ぼくを食べるとキャベツになるよ!」見上げた空には、鼻がキャベツになった“ブタヤマさん”が浮かんでいました。
「ブキャ!」驚いた“ブタヤマさん”でしたが、すぐに気を取り直し「じゃあ、蛇が君を食べたらどうなるんだ?」と聞きます。「こうなる」。“キャベツくん”の言葉に続いてページをめくると、キャベツになった蛇の姿が現れます。
「じゃあ、〇〇(動物)が食べたら?」 次々に出てくる“ブタヤマさん”の問いに、「こうなる」と答える“キャベツくん”。ページをめくると、キャベツになった〇〇が登場するという、とても楽しい絵本です。

評:「こんな絵を描いていいんだ!」と思わせてくれる絵本

主人公の“キャベツくん”’は、かわいいのか、かわいくないのか、微妙なラインにいるキャラクター。“ブタヤマさん”に至っては、とても不恰好で、どこをどう見ても、かっこいいとかステキと言った言葉とは無縁です。
ところがこの二人、子ども達には大人気。体が小さくまだ子どもの“キャベツくん”が、体も大きく大人の“ブタヤマさん”をやり込めるやりとりに、なんとも言えない爽快さを感じるようです。“キャベツくん”に、自分自身を投影する子も少なくないはず。次は何が出てくるの?次はどんな姿になるの?という期待感を呼ぶ構成にも心がひきつけられるのです。
長新太さんお得意のナンセンス絵本。物知り顔の大人は、「だからどうしたの?」と口にしてしまいそうな展開ですが、子ども達はきっと、この作品に流れるユーモアのセンスに魅了されることでしょう。
「広い広い空を見ていると、いろいろなものが見えてきます。~中略~ぼくは広い広い空を見て、いろいろなことを考えます。体の中がどんどん広くなっていくのがわかります。そうして優しい気持ちにな っていきます。」 (作者のことばより)
ときにはお子さんと一緒に空を眺めてみてはいかがですか?

【参考:続編】
『キャベツくんとブタヤマさん』
『キャベツくんのにちようび』