絵本紹介
絵本紹介
作・絵 加古 里子
福音館書店
“てんぐちゃん”と遊んでいた“だるまちゃん”は、“てんぐちゃん”の持っているうちわが欲しくなりました。それで、家に帰って“だるまどん”に、「“てんぐちゃん”のようなうちわが欲しいよう」とせがみます。“だるまどん”は家中のうちわを出してくれますが、どれもこれも“てんぐちゃん”のうちわとは大違い。考えているうちに、“だるまちゃん”は、庭のやつでの葉っぱをうちわにすることを思いつきました。“てんぐちゃん”も、「ずいぶんいいものを見つけたね」と誉めてくれ、“だるまちゃん”は大満足。
ところが今度は、“てんぐちゃん”の帽子が欲しくなり、帽子を手に入れると、今度は下駄が欲しくなり、下駄を手に入れると、今度は長い鼻が欲しくなって…。
他人の持っている物が何でも欲しくなるというのは、幼い子どもにありがちな現象。“てんぐちゃん”の持っている物を次々と欲しくなり、そのたびに家に帰って親にねだる“だるまちゃん”は、まさに小さな子どもの化身と言えるでしょう。
ただ、“だるまちゃん”がその辺の子どもと違うのは、同じ物がないからといってすねたり駄々をこねたりしないで、自分で考え、よく似た物を探しあてて代用すること。新しい物を買うのではなく、うちわはやつでの葉、帽子はおわん、下駄はおもちゃのまな板と、身近にある物で代用する点に好感が持てますし、子ども達の目にも新鮮な行為として映ることでしょう。 “だるまちゃん”の家でのシーンには、“だるまどん’’が用意してくれるいろいろな物の他に、うちわのシーンでは、庭のやつでの木が、帽子のシーンでは、食卓を用意するお母さんが、履物のシーンには、 ままごと遊びをする妹の“だるまこちゃん”が登場します。一見、ストーリーとは関係ない絵のようですが、実はこれが“だるまちゃん”の発想のヒントになっているという粋な構成に、作者特有のこだわり が感じられます。
【参考:だるまちゃんシリーズ】
『だるまちゃんとうさぎちゃん』 『だるまちゃんとかみなりちゃん』