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絵本紹介
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絵本紹介
文 かんざわとしこ
絵 にしまきかやこ
偕成社
一人でパンツがはけない“たつくん”。何度やってもひっくり返っちゃうものだから、「えい、パンツなんかはかないや」と、裸ん坊のまま外へ駆け出してしまいます。
ところが、犬も猫もネズミも牛も馬も、“たつくん”のお尻をじろじろ見ると、「しっぽのないつるつるのお尻」と大笑い。たまらず逃げ出した“たつくん”は、今度は田んぼにやってきます。片足で上手に立っている“さぎくん”を見つけ、彼の真似をしてみるけれど、やっぱりどでん!と尻もちをついてしまいました。
泥だらけになった“たつくん”がお家に帰ると、お母さんはミシンをかけていました。“たつくん”のズボンを作っていたのです。かっこいい真っ赤なズボン。嬉しくてはこうとしてみるけれど、やっばりどでん!。面倒くさいから尻もちついたままではいてみたら、あれれ、はけちゃった。パンツもズボンも、ひとりではけちゃった。
大得意の“たつくん”は、さっそく外へ飛び出し、みんなに自慢するのでした。
リズムのある文章と、明るい色彩のかわいらしい絵のバランスが絶妙な作品。主人公“たつくん”が尻もちをつくときの『どでん!』の音が、子ども達の笑いを誘います。動物達との心の交流も微笑ましく、できなかったことができるようになった“たつくん”に、子ども達は自分の姿を重ね合わせることでしょう。
なお、『立ったまま片足上げてはこうとすると、どうしても転んでしまってダメだったのに、座ったままではいてみたらすんなりできた」 というストーリーの流れには、『発想の転換により、できないと思っていたこともできるようになる』という、とても大切なことが隠れています。お母様の工夫次第で、お子さんの苦手なことを克服するヒン トにもなってくれそうですね。