絵本紹介絵本紹介

からすのパンやさん (年中)

からすのパンやさん (年中)

作・絵 かこさとし
偕成社

あらすじ: 四羽の赤ちゃんを育てながらパン屋を切り盛り…

“いずみがもり”はカラスの街。その街のパン屋さんに、四羽のかわいい赤ちゃんが生まれました。優しく大事に育てる両親でしたが、子育ては思いの他に大変で、パン作りに失敗したり、お店の掃除が行き届かなくなったり…。汚いお店に出来そこないのパンが並んでいるものだから、だんだんとお客さんが減って、貧乏になっていきました。 それでも四羽の赤ちゃんは、元気にすくすくと大きくなっていきました。今では、売ることができない焦げたパンや半焼きパンが、子ども達のおやつです。ある日、パン屋の兄弟がおやつをパクパク食べていると、カラスの子ども達がやってきて聞きました。「いつも変わったパンがおやつだね。おいしいの?」。「おいしいわよ」と答えて少し分けてあげたところ、意外にも子ども達の間で大評判になります。「明日、おやつに買いに来るから」「わたしもたくさん買ってもらうから…」口々に言って帰っていく子ども達。その晩、パン屋では家族揃っていろいろなパンを作ります。
さて次の日、朝早くから、香ばしい匂いが森いっぱいに広がりました。夜が明ける前から、大騒ぎで駆け付ける子ども達。その様子を見た大人の勘違いが勘違いを呼び、とうとう消防車や救急車や警官隊までが出動する大騒動になります。
そんなこんなで大盛況のパン屋には、森中のカラスの大行列ができました。そうしていつしか、街一番の立派なすばらしいお店になったのでした。

評: いろいろな姿をしたたくさんのカラスの表情が愛らしくワクワクする作品です。

子育てに忙しいあまり、仕事がおろそかになり、没落してしまった 両親が、成長した子ども達に助けられ、力を合わせて成功を手にするというサクセスストーリー。とはいえ、悲壮感などまるでなく、かこさとしさんらしい、ユーモア溢れる作品です。
このお話にはカラスしか出てきませんが、いろいろな姿をしたたくさんのカラスの表情が愛らしく描かれていて、見る者を楽しませてくれます。作者自身もあとがきで「個々の生きた人物描写と全体への総合化の大事なことを、わたしはモイセーエフ(ソビエトの舞踏団)に学び、からすの一羽一羽に試みてみた」と述べていますが、その言葉通り、おびただしい数のカラスが丁寧に描かれていて、圧巻です。ぜひその点にも注目してみてください。
また、作中には90種類ものパンが描かれているページもあります。 お子さんと、「どのパンがいい?」と選びあったり、「どんな味がするのかなぁ」と想像したりするのも楽しいと思います。

【参考:かこさとしおはなしのほん全10 冊】
『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』 『とんぼの うんどうかい』
『わっしよい わっしよい ぶんぶんぶん』 『どろぼうがっこう』
『あかいありと くろいあり』 『おたまじゃくし の101 ちゃん』
『にんじんばたけのパピプペポ」 「サザンちゃんの おともだち』
『からたちばやしの てんとうむし』