絵本紹介
絵本紹介
文 おおいし まこと
絵 きただ たくし
ポプラ社
暑い日も、風の日も、雨の日も、雪の日も、歩いて郵便配達していた“もりたろうさん”のあこがれは自動車。60歳で定年すると、教習所に通って運転免許を取得し、お店で一番安い自動車を買いました。 その自動車は見るからにおんぼろでしたが、ペンキを塗り替え、壊れたところを修理して、きれいに洗うと、それなりに立派な自動車になりました。
ある日、息子の“さとるさん”から手紙を受け取った“もりたろうさん”は、孫の“ももこ”の誕生日のお祝いに、自慢の自動車で行く ことにします。坂道を登り、大きな通りを走り抜け、“さとるさん”の家を目指す“もりたろうさん”。ときどき休憩しながらの、ゆったりとしたドライブです。
川の近くまで来たときです。オーバーヒートした自動車を停め、水をくみに行ったその隙に、近くの銀行から逃げてきた強盗が、“もりたろうさん”の自動車に乗り込みました。そのまま逃げようとしたのですが、ハンドルをきり損ねて川へドボン! 間もなくパトカーがやってきて強盗は捕まり、銀行の人は“もりたろうさん”に感謝しますが、大事な自動車を壊された“もりたろうさん”は悲しくてたまりませんでした。
翌日、すっかりしょげていた“もりたろうさん”のところに、銀行の人が、ピカピカの赤い自動車に乗って現れます。お礼にその自動車をもらった“もりたろうさん”の、驚いたこと、喜んだこと…。さっそく息子夫婦と孫を乗せると、奥さんの待つ家へと出発したのでした。
主人公の“もりたろうさん”は、白いおひげのおじいさん。とても 60歳とは思えない(最近の60歳は、とっても若いですからね!)、お歳寄りの風体です。ところが、その実態は、バイタリティ溢れる前向きな人。かわいらしいイラストの効果もあって、魅力的なキャラクターとなっています。
飽食の時代、おもちゃが壊れたら簡単に諦め、「また買えばいいよ」と思いがちな子ども達にも、「物を大切にするっていいな」と素直に思わせてくれるストーリー。車が大好きだという、きただたくしさんの描くおんぼろ自動車もクラシカルな魅力に溢れていて、子ども達の心をひきつけます。さらに、銀行ギャングのおまけまでついて、ドキドキ、ワクワク、最後まで存分に楽しめる展開です。
自動車が大好きな男の子はもちろん、女の子にも楽しんで欲しい絵本です。
【参考:続編】『もりたろうさんのひこうき』