絵本紹介絵本紹介

まりーちゃんとひつじ (年長)

まりーちゃんとひつじ (年長)

作 フランソワーズ
訳 与田準一
岩波書店

あらすじ: ”まりーちゃん”は、欲しい物の夢を繰り広げますが…

木の下に座った“まりーちゃん”。仲良しの羊の“ぱたぽん”に草を食べさせながら、言いました。「ぱたぽん、お前はいつか、子どもを1匹生むでしょう。そしたらわたし達その毛を売って、好きな物が何でも買えるわね」。
すると“ぱたぽん”は答えます。「ええ、子どもが1匹できるでしょう。そしたらわたし達、緑の原っぱに住むでしょう。原っぱには、雛菊の花がきれい、きれい。お日さまが一日キラキラ。わたし達、ふわふわの毛をたくさん作ってあげますよ」。 “まりーちゃん”の想像は、どんどん広がります。もしかしたら、2匹生むかもしれない、そしたら靴が買えるわ。3匹だったら花のついた赤い帽子が買えるわ。4匹なら、お祭りに行ってメリーゴーランドに乗れるわ。5匹なら、お人形とおもちゃと風船が買えるし、6匹なら、ロバが買える。7匹、8匹、9匹、10匹、たくさんたくさん生まれたら、お家とじゅうたんが買えるわ…
ところが“ぱたぽん”が生んだのは、たった1匹の小さな子羊だけで、“まりーちゃん”の靴下を編むのにちょうどいいくらいの毛糸しかとれませんでした。けれど、“まりーちゃん”はとても嬉しそうにしていました。なぜなら、“ぱたぽん”がその子羊を、とってもかわいがっていたからです。

評: リズミカルなフレーズも楽しく、かわいらしい絵本です。

木の下に座り、空想の世界に浸る“まりーちゃん”。生まれてくる“ぱたぽん”の子どもの数はどんどんと増え、それに伴って、買える物も次々と想像されていきます。これが買える、あれも買えると想像するのは、子どもにとって楽しいことです。自分がそれを手にした絵までも、思い描くかもしれません。
リズミカルなフレーズのくり返しも楽しく、親しみやすい上、“ぱたぽん”という響きの良い名前も効果的です。単純化された線画と暖かな彩色がイメージをさらにふくらませ、子ども達を空想の世界へと誘います。こういう絵本が、心を豊かにしてくれるのかもしれません。実は、この本には、表題作の他にもう一編、「まりーちゃんのはる」というお話が収められています。こちらには、あひるの“までろん”が登場し、仲間に加わります。さらに、“まりーちゃん”には、“ぴえーるくん”というボーイフレンドまでできるんです。お楽しみに!