絵本紹介
絵本紹介
作・絵 宮西達也
ポプラ社
生れたばかりの草食恐竜アンキロザウルスの赤ちゃんが、一人でとぼとぼ歩いていると、凶暴な肉食恐竜ティラノザウルスに出会いました。お腹を空かせていたティラノザウルスは、
「おまえ うまそうだな」
と生つばをゴクリ。よだれを垂らしながら、とびかかろうとしたそのときです。
「おとうさ?ん!」
アンキロザウルスは、ティラノザウルスに飛びついたのです。思わず、
「なんで、俺様が、お、お父さんだって、わかったんだ?」
と言ってしまうティラノザウルス。その日から、2人の暮らしが始まります。
広い荒野には、敵がいっぱいです。ティラノザウルスは、小さなアンキロザウルスを、身を呈して守ったり、生きて行く術を教えたり。 アンキロザウルスは、お腹を空かせたティラノザウルスのために、遠い山まで行って、赤い実を取ってきてくれました。
やがて、お別れの日がやってきます。
「さようなら ウマソウ」
ティラノザウルスの言葉が、すこし切なく響きます。
見るからに凶暴で悪そうなティラノザウルスが、エサにするはずのアンキロザウルスの赤ちゃんに、「おとうさん、おとうさん」と慕われ、「ぼく、お父さんみたいになりたいんだ」と言われて、戸惑いながらも、おとうさんらしく振る舞ううちに、優しい気持ちやアンキロザウルスを愛おしいと思う気持ちが芽生え、どんどん変わっていきます。子ども達は、ときに笑いながらも、その変化を心で感じ、ティラノザウルスに感情移入をしていきます。
そして訪れる感動のラストシーン。思わず泣いてしまうお子さんやお母さんも、少なくないのではないでしょうか。読み終わった後、お子さんの心にも、きっと、大切な何かが生まれるような気がします。
ところで、ユーモラスなイラスト、鮮やかな色造いの本作は、子どもから大人まで、幅広いファンを持つ宮西達也さんの代表作のひとつです。宮西さんによれば、ティラノザウルスシリーズで描いたのは、『さまざまな愛』。母と子の愛、友達同士の愛などがテーマになっている作品もあるので、シリーズでお楽しみ下さい。
【ティラノザウルスシリーズ】
「おれはティラノサウルスだ」「きみはほんとうにステキだね」「あなたをずっとずっとあいしてる」「ほくにもそのあいをください」「あいしてくれてありがとう」「であえてほんとうによかった」「いちばんあいされてるのはぼく」など