絵本紹介絵本紹介

わたし(年中)

わたし(年中)

文 谷川俊太郎
絵 長 新太
福音館書店

あらすじ: “わたし”という存在が、周囲の人や状況によって、どのような存在として認識されるのか…

 “わたし”は、男の子から見ると、女の子。赤ちゃんから見ると、お姉ちゃん。お兄ちゃんから見ると、妹。お母さんから見ると、娘の“みちこ”。犬の“ごろう’’から見ると、人間。きりんから見ると、ちび。宇宙人から見ると、地球人。おまわりさんから見ると、迷子?… “わたし”という存在が、周囲の人や状況によって、どのような存在として認識されるのかが語られます。

評:自分中心から自分を取り巻く社会へと感心がうつっていく子どもに、楽しく自分を認識させる

左ページには、“わたし”、右ページには、“わたし”を見る人間や動物が描かれています。背景が一切無く、“わたし”の後ろは真っ白、右側の人間や動物の後ろには登場者に合わせた鮮やかな色彩を用いており、非常にコントラストの効いたページ作りが印象的です。また、動きらしい動きが無いにもかかわらず、目の動きや表情から、さまざまな感情が生き生きと伝わって来て、優れたイラストの持つ力の大きさを、改めて認識させられました。幼児期には自分と母親だけだった世界は、成長するに従い、次第に広がっていきます。それが、年中~年長頃になると、自分中心から、 自分を取り巻く社会へと感心が移っていくことになります。そうした段階の子どもに、楽しく自分を認識させるお手伝いができる絵本です。