絵本紹介絵本紹介

きつねとつきみそう(年中)

きつねとつきみそう(年中)

文 こわせ たまみ  
絵 いもと ようこ
金の星社

あらすじ: 「私、一番始めに咲き出した月見草の側で待ってる」と約束した二匹でしたが…

夕方の涼しい風が吹き始めた川原に、月見草が咲いています。きつねの“ケン”は、立ち止まって花びらに顔を近づけました。すると、月見草がさわさわっと揺れ、女の子のきつねが顔を出しました。これが、“ケン”と“ノン”の出会いでした。
「また明日遊ぼう」、「私、一番始めに咲き出した月見草の側で待ってる」。約束して別れた二匹は、その日から毎日、月見草の側で待ち合わせては遊びました。
朝から、風の強い日でした。夕方には嵐になりました。迷った“ケン”でしたが、“ノン”が来ているかもしれないと思うとたまらなくなって、嵐の中へ走り出しました。約束の場所では、“ノン”がずぶぬれになって待っていました。川の水がどんどんと増え続け、アッと言う間に二匹は流れに足を取られてしまいました。“ケン’’は“ノン”を抱えて泳ぎ出しました。
どれくらいの時が過ぎたのでしょう。気がつくと二匹は“ノン”のお母さんの暖かい胸の中にいました。そしてぐっすりと眠りました。
翌日から、月見草の咲く川原には、“ケン”と“ノン”の楽しそうな笑い声が響くようになりました。その傍らで再び咲き始めた月見草は、黄色い灯りをともすかのように、ぽっぽっとその数を増していくのでした。

評:約束を守ることの大切さを教えてくれます

ひとりぼっちの“ケン”と、お母さんと暮らすと“ノン”の友情の物 語。「私、一番初めに咲いた月見草の側で待ってる」。出会いのときの、 ロマンティックな響きの約束を守り、嵐の日も待っていた“ノン”と、“ノン”を思い、危険を承知で嵐の中へと飛び出して行く“ケン”の美しい友情は、友情という観念を持たない幼い子どもの心にも感動を呼ぶとともに、約束を守ることの大切さを教えてくれます。
いもとようこさんの暖かな貼り絵が、柔らかな子ぎつねの毛の触感ゃ、ふわっと咲いた月見草の花を見事に再現し、二匹の子ぎつねの情愛の物語をより深いものにしています。