絵本紹介
絵本紹介
文 瀬田 貞二
絵 林 明子
福音館書店
ある朝“まみこ”は、「お母さん、今日は何の日だか知ってるの? 知ーらないの、知らないの、知らなきゃ階段3段目」と歌って、スキ ップしながら出かけて行きました。
階段へ行ったお母さんは、3段目に赤い紐を結んだ手紙を見つけました。そこには、「ケーキのはこをごらんなさい」と書かれていました。 ケーキの箱の中には、「つぎは、げんかんのかさたてのなか」、玄関の傘立ての中には、「こんどは わたしのほんのなかよ ヒントは、いちばんすきなえほんです」と言った具合に、次の手紙が置いてある場所を指示した手紙が入っています。お母さんは指示通りに探し、9通の手紙を見つけました。9通目には、「でんわで おとうさんのポケットのなか きいてください おねがい」と書かれていました。お母さんは、さっそくお父さんに電話をしました。お父さんのポケットには、「とうとう ゆうびんばこに プレゼントがとどきました おせわさま」という、10 通目の手紙がありました。
その日の夜、家族三人が居間に集まって、“まみこ”からのプレゼ ントを開けてみると、中から出てきたのは、折り紙で作った十重の小箱に入った紫のりゅうのひげの玉と、赤いなんてんの実。「紫水晶、 お父さん。赤いルビーがお母さん」と、“まみこ”がすまして言いました。そして、「手紙の中の木のついた字を重ねてごらん」と歌いました。お父さんとお母さんが言われた通りにすると、「ケつこんきねんびおめでとう」という文字が現れたのでした。
両親の10回目の結婚記念日に、“まみこ”はとてもステキな贈り物をしました。それは、成長した“まみこ”が自分の頭で考えた楽しい仕掛けと、自分の手で作った紫水晶とルビー。けれど、両親にとって何より嬉しいプレゼントとなったのは、‘’まみこ”が、豊かな想像力を持った、優しい女の子に成長してくれたことではないでしょうか。 “まみこ”が仕掛けた10通の手紙による謎解きは、子どもらしい発想でありながらも、とても計算されています。10通の手紙を合わせると、「結婚記念日おめでとう」というフレーズが浮き出てくるという暗号のおまけまでついて、本当にすばらしい。こういう遊びは、残念ながら知識だけでは生まれません。豊かな発想力と想像力が成せる技です。
さて、宝捜しは、子どもにとっても、大人にとっても魅力的です。これを読んだ女の子は、きっと自分も同じような仕掛けを作りたくなることでしょう。