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むしばミュータンスのぼうけん(年長)

むしばミュータンスのぼうけん(年長)

作 かこさとし
童心社

あらすじ: “虫歯ミュータンス”一見ヒーローのように見える彼ですが…

『我輩の名は“虫歯ミュータンス”。本当はもっと長くて難しい名前だけれど、君達子どもはそう覚えてくれたまえ』。堂々とした口上を述べて颯爽と登場し、なぜかタンスの上でポーズをとる“虫歯ミュータンス”。一見ヒーローのように見える彼は、実は虫歯の原因となる微生物です。その彼が、自分がどのようにして人々の歯を虫歯にしていくのか、虫歯がどんなに怖いものなのかを、誇らしげに語る、科学的な絵本です。

評:本物の虫歯菌に関する専門的な知識に裏づけされたフィクション

幼い頃には、小さな人間のような姿をしたバイキンが、シャベルやツルハシを持って歯を掘っている絵を見せて、「歯磨きしないと、怖いバイキンがやってきて、歯を虫歯にしちゃうわよ」などと脅せば、子どもは本当にそんな生き物がいて、自分の歯をほじくってしまうのではないかと想像し、素直に歯を磨くでしょう。けれど、年長児ともなれば、そんなわけにはいきません。なぜなら、そんな生き物が口の中にいないことを、彼らはすでに感づいているからです。
この本のすごいところは、虫歯が出来ていく実際の過程を見せていることです。本物の虫歯菌がどのような姿をしているのかを見せたり、 その菌がキレイな歯を虫歯にしていく過程を段階を追って見せていったりと、お母様でもご存知ないような専門的な知識をふんだんに盛り込みながらも、平易な言葉で子ども達にも充分に理解できるよう説明していることです。お菓子を食べた後、歯を磨かないとどうなるのかが、非常にわかりやすく説明されていることです。虫歯ができると、 どんなに辛いのか、放っておくとどんなに大変なことになるのかが、 きちんと説明されていることです。専門的な知識に裏づけされたフィクションだからこそ、子ども達は“虫歯ミュータンス”を恐れ、歯を磨かなければならないと理解するのです。
実は、この本では一度も「歯を磨きましょう」というような呼びかけはありません。それどころか、全編を通して、語り手である“虫歯ミュータンス”からの子ども達へのメッセージという形がとられており、「歯磨きなんかしないでね」、「甘いお菓子をたくさん食べて、早く虫歯だらけになってね」と呼びかけているのです。にもかかわらず、本当に虫歯だらけになろうと思う子どもはいないはずです。読んだ後、すぐにも歯を磨こうとする子どもが多いはずです。
しっかりとしたストーリーで、読み物としても楽しい作品です。
【参考:かこさとし からだの本 全10 巻】
1. 『あなたのおへそ(生命)』 2 . 『たべもののたび(消化)』
4 .「あか しろ あおいち(血液)』
5 . 『はしれますか とべますか(運動)」
6 . 『てと てと ゆびと(手・指)』
7 .「あがりめ さがりめ だいじなめ(目)』
8 . 『ほねは おれます くだけます(骨)』
9 . 『すって はいて よいくうき(呼吸)』
10.「わたしののうと あなたのこころ(脳・心)』