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サリーのこけももつみ(年中)

サリーのこけももつみ(年中)

文・絵 ロバート・マックロスキー 
訳 石井桃子
岩波書店

あらすじ: サリーとおかあさんは、コケモモ山ヘコケモモを摘みに行きましたが、途中でおかあさんとはぐれてしまい・・・

ある秋の日のことです。サリーとおかあさんは、コケモモ山ヘコケモモを摘みに行きました。「コケモモを摘んだら、家に持って帰ってジャムを作りましょう。そうすれば、冬になって、たくさんジャムが食べられるからね。」ところがサリーは、摘んだコケモモを食べてしまうので、小さなバケツはいつまでたっても空のままです。
その頃、山の反対側には、ちいさなクマがお母さんクマと一緒に、コケモモを食べに来ていました。寒くて長い冬が来る前に、たくさん食べて太っておこうというのです。
最初のうちはおかあさんの近くでコケモモを食べていたサリーとこぐまでしたが、歩くのに疲れたり、コケモモを食べるのに夢中になったりで、気がつくと、おかあさんの姿が見えません。さあ困った!
こうして、はぐれてしまったおかあさんを探す、サリーとこぐまの冒険が始まりました。二人は無事、おかあさんと会うことができるでしょうか。

評:果たしてはぐれた母親に会えるのか・・・読み手をお話の中へと引き込みます

小さな娘サリーが母親と一緒にコケモモ摘みに行った日の出来事を、父親であるロバート・マックロスキーが絵本にしました。マックロスキーは、一年の大半を家族と一緒にアメリカ北部の無人島で過ごしていたそうで、このお話も、そうした生活のなかから生れたそうです。途中でおかあさんとはぐれてしまった、サリーとクマの子。怖いもの知らずの幼い女の子とクマの子が母親を探す様子は、「大丈夫かな?」「お母さん見つかるかな?」子ども達をお話の中へと引き込みます。サリーはクマのおかあさん、クマの子はサリーのおかあさんと、それぞれ出会ってしまったときは、きっとドキドキすることでしょう。
丁寧に描きこまれた絵は、モノトーンでありながら、ワンシーンワンシーンが鮮やかに思い浮かぶ見事さで、自然の中での母子のやりと りや、サリーの様子もほほえましく、いろいろな音や声も聞こえてきます。また、石井桃子さんによる翻訳も、わかりやすくきれいな日本語となっていて、小さな子にぜひとも読み聞かせてあげたい一冊となっています。

同じマックロスキーの作品で、ユーモラスで力強い傑作「かもさんおとおり」もおすすめです。