絵本紹介
絵本紹介
作 ガース・ウイリアムズ
訳 まつおか きょうこ
福音館書店
広い森の中に住んでいる二匹のうさぎ。“しろいうさぎ”は女の子で、 “くろいうさぎ”は男の子です。
二匹はとても仲良しで、朝から晩まで一緒です。馬飛びをしたり、かくれんぼをしたり、どんぐり探しをしたり、かけっこをしたり…。 喉が乾けば一緒に泉へ行って、冷たい水を飲みます。お腹が空けば、一緒にタンポポを食べます。とっても楽しい毎日です。
ところがいつの頃からか、“くろいうさぎ”が、ときおり悲しそうな顔をして座り込むようになったのです。心配した“しろいうさぎ” が「どうしたの?」と尋ねても、「ぼく、ちょっと考えていたんだ」と言うばかり。何度かそんなことが続いたある日、とうとう“くろいうさぎ”は、“しろいうさぎ”に彼の願いを告白します。それは、「これから先、いつも、君と一緒にいられますように」という愛の告白でした。
満月の夜、タンポポの花を耳に飾った二匹のうさぎは、大勢の森の動物達に祝福され、結婚します。そして二匹は、楽しく幸せに暮らしたのでした。
原題は “The Rabbits’ Wedding”。『結婚=永遠の愛』をテーマにした美しい絵本です。水を飲む“しろいうさぎ”を見つめる愛しさに溢れるまなざし、「どうしたの?」と聞かれて戸惑う困ったような表情…、 誰かを好きになったときの繊細な心が、“くろいうさぎ”の表情を通して伝わってきます。また、愛を告白された“しろいうさぎ”の驚きの表情も愛らしく、かわいらしい。どのページの絵からも、二匹のうさぎの心の動きが溢れだし、まるで生きているかのようです。
世界的に高い評価を受けている挿絵画家であり絵本画家でもある作者のガース・ウイリアムズ。墨絵を思わせるタッチと色彩の背景に、 生き生きと描き出される二匹のうさぎからは、絵とは思えないほど、ふわふわの毛の感触が伝わってきて、思わず手を触れてみたくなりました。
芸術性の高い絵本は、幼い子どもの心に豊かな感性を育てます。こうした優れた絵本を読み聞かせながら、親子でゆったりとした時間を過ごしてください。