絵本紹介
絵本紹介
作 五味太郎
偕成社
“ワニさん”が、いやいやながら歯医者さんに行きました。奥歯に虫歯が出来て、痛むのです。恐る恐るドアを開け、歯医者さんを見たとたんに、どきっ。心臓が止まりそうになりました。でも、怖いのは歯医者さんも同じ。だって、ワニの奥歯を治療するんですから。覚悟を決めて治療を始めたものの、治療が痛い“ワニさん”と、手を噛まれた歯医者さんは、「ひどいじゃないか」と怒ります。気を取り直して治療を続け、終わったときにはお互いに「ほっ」。笑顔で挨拶したものの、二度と会いたくないと思うのでした。
同じ場面で、同じ言葉が、患者である“ワニさん”と、治療する歯医者さんの両方から出るという、とてもユニークな絵本。それが、両者の心理状態を見事に表わしていて、読者の笑いを誘います。“ワニさん”は虫歯の治療が怖いだろうけれど、治療する歯医者さんだって、ただでさえ怖いワニさんの口の中に手を入れるのはものすごく怖いはず。双方の気持ちが痛いほどわかるから、思わず笑ってしまうのです。子ども達は、繰り返しの楽しさに魅了され、一緒に口ずさむことでしょう。お母様は“ワニさん”、お子さんは歯医者さんと、役割を分担して読むのも楽しそうです。