絵本紹介
絵本紹介
作 松岡享子
絵 林 明子
福音館書店
“ぼく’’は、お風呂が大好き。いつも、仲良しのあひるの“プッカ’’と一緒にお風呂に入ります。“ぼく”が体を洗っていると、ザァーツと音がして、大きなカメが浮かんできました。そして“ぼく”の方を見ると、「海は、底の方より、上の方が熱いんだね」と言うではないですか。「ここは、ぼくんちの お風呂です」と答えると、カメは首を伸ばして、「ほう、お風呂にも ペンギンがいるんですか」と言います。振り向くと、そこには二匹の子どものペンギンが立っていました。
オットセイ、太ったカバ、そしてクジラと、次々と大きな動物がお風呂から現れては、シャボン玉を操ったり、体を洗って欲しいと頼んだり…。最後にはみんな揃って湯船に入り、変わり番こに数を数えます。
大きな口を開けたクジラが大声で「50ッ!」と叫んだとき、お母さんが顔を出し、と同時にみんなお湯に潜って、それきり出てはきませんでした。“ぼく”は“プッカ”を連れてお風呂から上がり、お母さんが広げたバスタオルの中に飛び込んだのでした。
小さな家庭のお風呂が、動物の登場とともに無限に広がっていく。同時に、想像力もドンドンと広がっていく、とても楽しい絵本です。 お風呂の中から次々と登場する海の動物たちと、“ぼく”との会話が、丁寧で正しい日本語で展開する点にも好感が持てますし、暖かいお風呂の中で、愛らしい表情の“ぼく”や動物達が遊んでいる絵からは、みんなの楽しい気持ちまでが伝わってくるようで、こちらまで温かい気持ちになれます。
物語は長く、活字も多いのですが、展開がおもしろいので、子ども達は楽しんで聞くことができるはずです。万が一、集中力が切れそうになったときは、「今度はどんな動物が出てくるかな?」と、次を予想させてみると良いでしょう。そうそう、読んだ後で、「ひとりでお風呂に入る」と言い出したらしめたもの。ぜひ挑戦させてみてください。