絵本紹介
絵本紹介
作 レオ・バスカーリア
訳 みらい なな
童話屋
フレディは、この春大きな木の梢に近い、太い枝に生まれた葉っぱです。親友は、誰よりも大きくて、昔からいるような顔をしているダニエル。考えることが好きで物知りのダニエルは、フレディにいろいろなことを教えてくれました。暑い夏、木陰を求めて公園にやってくる人々のために、涼しい木陰を作ってやることが、葉っぱの仕事の一つであること、一緒に生まれた同じ木の同じ枝の同じ葉っばでも、さまざまな外的要因が違うため、決して同じ色には紅葉しないこと、やがて冬が来ると、自分たちは葉っぱの仕事をすべて終え、死ぬということ。けれど、死は怖くない、なぜならこの世は常に変化している、死ぬということも変化の一つであり、自然なことだということも、教えてくれたのはダニエルでした。
初雪が降った日、大きな木に残っているのはフレディだけになって いました。フレディは、自分が色あせて枯れてきたように思いました。明け方、フレディは迎えに来た風に乗って、枝を離れました。痛くも怖くもありませんでした。一端空中に舞ったフレディが、地面に降りたそのときです。フレディは初めて自分が一生を過ごした木の全体像を見ました。たくましい木でした。フレディは、以前ダニエルから聞いた“いのち”という言葉を思い出しました。ダニエルによれば、“いのち”は永遠に生き続けるということでした。雪の上に降りたフレディは、目を閉じ、眠りに入りました。
フレディは知りませんでしたが、冬が終われは春が来て、雪は解けて水になります。枯れ葉のフレディはその水に混じり、土に溶け込んで、木を育てる力になっていくのです。
今こうしているときも、大自然の設計図は寸分の狂いも無く、“いのち”を変化させ続けています。その、壮大なロマンの中では、人間など取るに足らない小さな生き物に過ぎません。大自然の大きな力、それこそが“いのち”なのです。アメリカの著名な哲学者、レオ・バスカーリア博士によるこの絵本は、フレディという名の葉っぱの一生を借りながら、個々の存在意義や、死のとらえ方などを、哲学的に解説しています。とても深くて難しい絵本です。けれど、その一方で、自分で考えることを始めた子ども達にとって、 さまざまな刺激ときっかけを作ってくれる絵本でもあります。書かれていること全部は理解できなくても、何かが心に残るはずです。そして、それがまた「考える」きっかけとなり、成長するのです。もちろん、お子さんに読んであげるのもいいのですが、まずはお母様、お父様ご自身のために、読まれてはいかがでしょうか?