絵本紹介絵本紹介

マリールイズ  いえでする(年長)

マリールイズ  いえでする(年長)

文 N.S.カールソン
絵 J. アルエゴ/ A. デューイ
訳 星川 菜津代
童話館出版

あらすじ: マリールイズは、マングースの女の子。いつもは “よい子”ですが、ある日 “わるい子”になりました。

茶色いマングースの女の子“マリールイズ”は、さとうきび畑の真中にある、小さな萱葺きの家に、お母さんと二人で住んでいます。
ある日突然、“マリールイズ”は悪い子になります。泥んこパイを作ってかまどを泥だらけにしたり、夜寝るときに尻尾を外に出しておけるよう布団に穴を開けたり、挙句の果ては、はげたかの卵をふくろうの巣に入れたりしたものだから、お母さんは怒って、“マリールイズ”のお尻をぶちました。
するとどうでしょう。“マリールイズ”は反省するどころか、「新しいお母さんを探すわ」と宣言し、家を出て行ってしまったのです。お母さんは、「そう簡単に新しい母さんは見つからないわよ」と、お弁当のクラゲ入りピーナッツバター・サンドウィッチを持たせて、“マリールイズ”を送り出しました。
お母さんの言った通り、新しい母さん探しは難航しました。親友のへびの“クリストフ”のお母さんには、「いたずらっ子はひとりでたくさん」と断られ、あひるの“せかせかおばさん”には、「10人の面倒を見るのに大忙しよ」と断られ、亀の“かみかみおばさん”には、「子どもにかまっていられるものですか」と断られ、アルマジロの“しましまおばさん”には、「体中毛だらけのみっともない子はいらない」と断られてしまいます。がっかりした“マリールイズ”は、それなら父さんを探そうと、子どもがいない魔法使いのヒキガエルを訪ねました。ところがヒキガエルにまでも、「家出するような子は、魔法の覚えも悪いにきまっている」と断られてしまいます。頭を抱える“マリールイズ”にヒキガエルは、「今しがた、子どもを一人欲しいというステキなご婦人が訪ねてきた。急げば追いつくだろうよ」と教えてくれました。
ヒキガエルが教えてくれた通り走った“マリールイズ”。するとそこには、本当のお母さんがいました。そうして二人は、仲良くお家に帰って行ったのでした。

評:子ども達は、“マリールイズ”になりきって、見なれない世界での冒険を楽しむことでしょう。

自分が悪いのを棚に上げ、母親がぶったことに腹を立てて家出してしまう娘。思春期にありがちな光景です。ところが、“マリールイズ” の母親は、そんな娘を前にしても、慌てず騒がず、澄ました顔でお弁当を作り、娘に持たせて送り出してしまう。このどっしりとした対応は、あっぱれと賞賛するしかありません。さらに、誰にも相手にされなかった“マリールイズ”が家出に嫌気がさしてきた頃、タイミングよく現れる、これまたあっぱれな母親です。父親ならこんなわけにはいかないだろうなぁと思い、なんだか情けなくなりました。
柔軟な発想で描かれた明るい色彩の絵からは、独特のエネルギーが感じられ、子ども達の想像力をもかき立てます。主人公がマングースで、その親友がへびというのもしゃれっ気があっておもしろいし、どこか怪しげな星模様のヒキガエルも茶目っ気があります。子ども達は、“マリールイズ”になりきって、見なれない世界での冒険を楽しむことでしょう。