絵本紹介絵本紹介

ハリーのセーター(年中)

ハリーのセーター(年中)

文 ジーン・ジオン
絵 マーガレット・ブロイ・グレアム 
訳 わたなべ しげお 
福音館書店

あらすじ: 誕生日の贈り物にバラの模様のセーターをもらいました。ところが、ハーリーはその模様が嫌いで・・・

“ハリー”は、黒いぶちのある白い犬です。“ハリー”のお誕生日に、おばあちゃんからセーターが届きました。着てみるとピッタリ。ホカホカして暖かくて気持ちもいい。ところが“ハリー”はこのセーターが気に入りません。バラの模様が嫌なのです。 どこかへ捨ててしまおうといろいろ試みるのですが、なかなか上手くいきません。
仲間と遊ぶ気にもなれず、座り込んでいたときです。空から鳥が舞い降りてきて、“ハリー”のセーターから出ていた毛糸をくわえると、そのまま空へと飛び上がり、どこかへ飛んで行ってしまいました。“ハリー”のセーターはあっという間に一本の毛糸になり、鳥と一緒に飛んで行きました。もちろん、“ハリー”は大喜び!ところが、困ったのは家族です。おばあちゃんが、遊びに来るからです。みんなで探してみたけれど、結局セーターは見つかりません。
いよいよおばあちゃんがやってきました。“ハリー”はおばあちゃんと子ども達を公園に誘い、大きな木の下に連れて行きます。見上げるとそこには、バラの模様の暖かそうな鳥の巣がありました。
クリスマス、“ハリー”のところに、またまたおばあちゃんからセーターが届きました。今度はハリーも大喜び。なぜなら、黒いぶちのある白いセーターだったからです。

評:飼い犬とその家族との心温まる日常を、“ハリー”という飼い犬の視点から描いた心温まる物語。

ジーン・ジオン&マーガレット・ブロイ・グレアム夫妻によるハリーシリーズは、飼い犬とその家族との心温まる日常を、“ハリー”という飼い犬の視点から描いた心温まる物語。あれこれといたずらをし、 ときに飼い主を困らせる“ハリー”ですが、“ハリー”の側にもそれ相応の事情があるのだということがユーモラスに描かれています。
この「ハリーのセーター」では、せっかくお誕生日にプレゼントされたにもかかわらず、柄が気に入らないから着たくない“ハリー”の奮闘振りが、楽しく描かれています。『気に入らないセーターを着なくても良くするには、セーターが無くなればいいんだ』という考えや、家族にわからないようになんとか捨てようとするハリーの行動に、子ども達は大いに共感します。なぜなら、彼らは同じような気持ちに心当たりがあるからです。「わかる、わかる…」という気持ちなのです。
力強い黒くて太い線画に、数色だけを使って着色した絵には安定感があり、物語のイメージをどんどんと膨らませています。

[参考:ハリー シリーズ】
『どろんこハリー』 『うみべのハリー』