絵本紹介絵本紹介

ラン パン パン(年長)

ラン パン パン(年長)

再話 マギー・ダフ 
絵 ホセ・アルエゴ/アリアンヌ・ドウィ 
訳 山口 文生
評論社

あらすじ: わがままな王様におくさんをさらわれたクロドリは、王様に戦いをいどむため武装して出かけ・・・

むかしむかし、仲の良いクロドリの夫婦がいました。夫のとても良い声の持ち主で、歌を歌っては女房に聞かせています。
ある日のこと、通りかかった王様がその声を聞き、
「あの声の主を連れて来い。わしの宮殿で嗚かせてみたい。」
と家来に命令しました。ところが、捕まったのは女房の方。クロドリは怒り狂って身支度を整え、女房を取り戻しに宮殿へと向かいます。
しばらく行くと、ネコに会いました。話を聞いたネコは、
「私も行くわ。王様に子どもを殺されたの。」
「ぼくの耳の中にお入りよ」
とクロドリ。ネコはクロドリの耳の中に飛び込んで、丸くなって眠りました。同じように、王様に恨みを持つアリと木の枝と川も仲間になり、クロドリの耳の中に潜んで、共に宮殿を目指します。
さて、王様のところへ行き、女房を返せと頼むクロドリ。ところが王様は意地悪で、クロドリをニワトリ小屋へ放り込み、餌食にしようとするのです。その晩、耳の中で眠っていたネコを自慢の歌声で呼び出し、助けてもらったクロドリ。次の晩は馬小屋、その次の晩はゾウの檻に放り込まれますが、木の枝やアリに助けられます。
そして最後の晩、川の力を借りて王様を懲らしめ、女房を無事取り返したクロドリは、家に帰り、ずっとずっと幸せに暮らしました。

評:クロドリが仲間とともに悪い王様をやっつける、とても痛快なお話です。

クロドリが仲間とともに悪い王様をやっつける、とても痛快なお話です。インドに古くから伝わる民話を、アメリカ人の作者とフィリピン出身のイラストレーターが絵本にしました。
話の筋は、『ももたろう』ととてもよく似ていますが、女房を捕らえられ、怒り狂ったクロドリが王様と闘うために整える武装はなんともおかしく、出会う仲間を耳の中に潜ませて一緒に連れて行くという展開もユニーク。さらに、その仲間が、ネコ、アリ、木の枝、川とバラエティに富んでいることも愉快です。小さなクロドリの耳の中は一体どんな状態なのかと心配になりますが、そこもちゃんと描かれていて楽しめます。
小さなクロドリが、家来のいっぱいいる意地の悪い王様を、あの手この手で追い詰めて、最後には、「頼むから出て行ってくれ!」とやり込める。その顛末に、胸がスーツとすることでしょう。
題名の「ラン パン パン」は、宮殿を目指すクロドリが、威勢よく叩く太鼓の音。文中にも、「ランパンパン ランパンパン ランパンパンパンパン」と何度も出てきますので、ぜひ、力強く読んであげましょう。きっとお子さんも大喜びですよ。