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ちいさな星の子と山ねこ(年中)

ちいさな星の子と山ねこ(年中)

作 にしまきかやこ
こぐま社

あらすじ: 初めて地球に遊びに来た星の子は、バッタや魚とすぐに友だちになります。けれども・・・

いつも月の母さんの一番近くにいた小さな“星の子”が、緑色のマントを着せてもらい、地球に向かって飛び立ちます。地球に舞い降りた“星の子”は、起き出して来たバッタや魚とすぐに友だちになり、一緒に飛び跳ねて遊んでいました。
その様子を見ていたのが“山ねこ”でした。“山ねこ”は勢いよく飛び出し、“星の子”を捕まえようとしますが、“星の子”は遊んでくれているのだと誤解し、喜んで跳ね回ります。ところが、しばらくすると“山ねこ”のせいでマントが破れたため、「お空へ帰ることが出来ない」と“星の子”が泣き出しました。
困った“山ねこ”は“星の子”を自分の家に連れて帰り、ブドウを食べさせながら、どうしたものかと考えました。すると、様子を見ていた“ふくろう”が、「山繭の糸で縫っておやり」と教えてくれました。朝になると、“山ねこ”は眠い目を擦りながら、山繭を探しに出かけました。そして、いくつもの山や林を歩き回り、ようやく山繭をひとつ見つけることができました。家に帰るともう夜でした。“星の子” はバッタや魚と遊んでいました。「のんきな子だ」と思いつつ、“山ねこ”は薪を拾い、お湯を沸かして、糸を紡ぎました。その糸を使って、“星の子”のマントを丁寧に縫いました。縫いながら、『これができたら“星の子”が帰ってしまう』と考えると、ちょっぴり寂しい気持ちがしました。その夜、きれいに繕ったマントを着せてやると、“星の子”は喜んで、ぴゅーんと帰って行きました。「星の子ってかわいいねー」お月様に向かって大声で叫んだ“山ねこ” は家に帰り、三日ぶりにぐっすりと眠ったのでした。

評:それぞれの絵には、生き生きとした動きや表情があり、お話の世界を盛り上げています。

最初はちょっと意地悪そうですが、実はとても心が優しい“山ねこ”。破いてしまった“星の子”のマントを繕うために、さまざまな努力を重ねます。二晩も寝ないでがんばるけなげな姿に、子ども達も心ひかれ、“星の子”と別れるときの“山ねこ”の気持ちを思いやることでしょう。
それぞれの絵には、生き生きとした動きや表情があり、お話の世界を盛り上げています。お話の舞台は夜が中心なので、その分色彩も抑えがちですが、白黒のページとカラーのページを交互に登場させることで、彩色の効果を上げていますし、想像も広がります。また、“山ねこ”の表情からはそのときどきの気持ちが伺えて、物語をより一層深いものにしています。
読んだ後にはお子さんと一緒に夜空を眺め、“星の子”を探してみてはいかがですか?