絵本紹介絵本紹介

きつねのおきゃくさま(年中)

きつねのおきゃくさま(年中)

文 あまん きみこ      
絵 二俣 英五郎 
サンリード

あらすじ: はらぺこのキツネが何か食べる物はないかと探していると、痩せたヒヨコが歩いてきました・・・

昔々のお話です。はらぺこのキツネが、何か食べる物はないかと探していると、痩せたヒヨコが歩いてきました。一気に食べてしまおうかと思いますが、あんまりヒヨコが痩せているものだから、「このままでは美味しくない。太らせてから食べることにしよう」と考え直し、自宅に連れて帰って、甲斐甲斐しく世話をしました。
無邪気なヒヨコは疑うことを知りません。キツネを心底信用し、「優しいお兄ちゃん」と慕います。しばらくすると、ヒヨコは丸々と太ってきました。
そんなある日のこと、ヒヨコが散歩に行きたいと言い出しました。「逃げる気かな?」と思ったキツネは、こっそりヒヨコの後をつけて行きます。ところがヒヨコは逃げ出すどころか、途中で出会った痩せたアヒルをキツネの家に連れ帰ります。ヒヨコから「親切」と評されたキツネは、それはそれは親切にヒヨコとアヒルの世話をしました。しばらくすると、アヒルも丸々と太ってきました。
さらに、ヒヨコとアヒルが痩せたウサギを誘い、キツネの家の居候は、とうとう三匹になりました。「神様みたい」とおだてられてすっかりその気になったキツネは、神様のようになって三匹を育てるのですが、ある日、山のオオカミがやってきて…。
キツネは三匹を守るために懸命に戦い、オオカミを追い返しますが、大怪我をして死んでしまいます。
残された三匹はお墓を作り、やさしく、親切で、神様みたいで、その上、とても勇敢なキツネのために涙を流したのでした。

評:懸命にがんばるキツネの姿に、誉められることの大切さ、誉めることの重要性を改めて認識させられます。

昔話のスタイルをとりながらの、創作童話。リズムのある文章が親しみやすく、ストーリーの展開をも盛り上げます。小さな者の純真な心から発せられる素直な言葉によって、よこしまなキツネの心が変化していく様子が、とてもほほえましく思われます。
「優しい」、「親切」、「神様みたい」という誉め言葉にうっとりし、その言葉に応えようと懸命にがんばるキツネの姿に、誉められることの大切さ、誉めることの重要性を、改めて認識させられました。人間も同じです。誉められ、期待されれば、それに応えようとがんばるものです。この絵本は、お子さんに接する態度に関しても、重要なヒントを与えてくれるように思います。