絵本紹介
絵本紹介
文 西内ミナ
絵 堀内誠一
福音館書店
とっても大きなゾウの“ぐるんぱ”は、ずっと一人で暮らしてきた汚くて臭いゾウ。ときどき「さみしいな、さみしいな」と言って、耳を草に擦りつけて泣いたりします。
ある日、ジャングルで会議が開かれました。「“ぐるんぱ”は大きくなったのに、いつもブラブラしている。働きに出そう」。会議での決定を受け、みんなは川へ“ぐるんば”を連れて行き、ごしごし洗います。みちがえるほど立派になった“ぐるんぱ”は、ビスケット屋の“びーさん”のところで働き始めました。けれど、張り切りすぎてあまりにも大きなビスケットを作ったものだから、誰も買い手がつきません。
「もう けっこう」といわれ、お店を追い出されてしまいます。
お皿作りの“さーさん”のところ、靴屋の“く一さん”のところ、ピアノ工場の“ぴーさん”のところ、自動車工場の“じーさん”のところ。次々と新しい職場に張り切って行く“ぐるんぱ”ですが、張り切りすぎて特大サイズを作るものだから、あっちもこっちも首になってしまうのです。すっかり気落ちしていたところ、 12人の子どもを持つ多忙なおかあさんから、「子どもと遊んでやってくださいな」と頼まれました。そこで、“ぐるんぱ”は自分で作った特大のピアノを弾いて歌いました。 それを聞いた子ども達が、あちこちからどんどんと集まってきました。
そこで今度は、特大のビスケットをちぎって子ども達にやりました。とうとう“ぐるんぱ”は幼稚園を開きました。そして、たくさんの子どもに囲まれて楽しく暮らしました。
ビスケット屋、お皿作り、靴屋、ピアノ工場、そして自動車工場。 “ぐるんぱ”は、一生懸命働くのですが、張り切りすぎて空回り。大きなゾウだけに、自分サイズのとても大きな物を作っては、すぐに追い出されてしまいます。そのときの雇い主の「もう けっこう」という言葉は、ユーモラスな響きで、子ども達にも親しみがもてます。同じ展開が5 回繰り返されるので、ページをめくる前に子ども達に先を予想させてみるのも良いと思います。
また、一軒目のビスケット屋を追い出された“ぐるんぱ”は、「し ょんぼり」、二軒目のお皿作りを追い出されたときは、「しょんぼり、しょんぼり」、三軒目の靴屋を追い出されると、「しょんぼり、しょんぼり、しょんぼり」といった具合に、同じ言葉の繰り返しが、回を追うごとに増えていくのも楽しいもの。この部分を子ども達と一緒に読むというのも楽しいですよ。
さて、次々と職場を変えては一生懸命働く“ぐるんぱ”は、自分探しの旅をしているのかもしれません。最後に、本当に自分にあった仕事を見つけ、自分のいるべき場所を自ら作り出す。まるで人生の縮図のようです。
鮮やかな色彩と単純化された図柄、そしてどことなく愛嬌のある登場人物たち。幼児にも親しみやすい絵から感じられる温かい味わいも魅力です。