絵本紹介絵本紹介

スーホの白い馬(年長)

スーホの白い馬(年長)

再話 大塚 勇三   
絵  赤羽 末吉 
福音館書店

あらすじ: 昔、モンゴルの草原に、“スーホ”という羊飼いの少年がおばあさんと住んでいました。

 昔、モンゴルの草原に、“スーホ”という羊飼いの少年がおばあさんと住んでいました。“スーホ”は、貧しいけれど働き者でした。
ある日、“スーホ”は生まれたばかりの小さな白い馬を助け、家に連れ帰って心をこめて世話をしました。やがて子馬は立派に育ち、誰もが見とれる美しい馬になりました。
ある時、殿様が競馬の大会を開くことになり、“スーホ”も白い馬と出場することになりました。優勝者は、殿様の娘と結婚できるのです。国中のたくましい若者が集まり、自慢の馬を駆りましたが、優勝したのは“スーホ”と白い馬でした。ところが、“スーホ”が貧しい羊飼いだと知った殿様は、約束を守らなかったばかりか、白い馬まで取り上げてしまいます。“スーホ”は、悲しみに暮れます。
ある晩のこと、白い馬が逃げてきました。体には矢が何本も突き刺さり、汗が滝のように流れ落ちています。翌日、白い馬は力尽き、“スーホ”の腕の中で死んでしまいました。
悲しみと悔しさで、“スーホ”は何日も眠ることができませんでした。 ようやくとろとろと眠り込んだとき、夢の中に白い馬が出てきて、「自分の骨や皮や筋や毛を使って楽器を作ってください」と言い、楽器の作り方を詳しく教えてくれました。夢から覚めた“スーホ”は、夢中でその楽器を作りました。これが、モンゴルの楽器“馬頭琴”ができた由来です。

評:明暗や濃淡を巧みに使い分けた、豊かな色彩の水彩画は、大自然の中で生きる人間のたくましさ、力強さを雄弁に語っており、人間のすばらしさを感じさせてくれます。

 果てしなく続くかのように見える大草原、遥か彼方の地平線、横長大判サイズを充分に生かしたスケールの大きな絵が、モンゴルの大自然を思わせます。明暗や濃淡を巧みに使い分けた、豊かな色彩の水彩画は、大自然の中で生きる人間のたくましさ、力強さを雄弁に語っており、人間のすばらしさを感じさせてくれます。
貧しくとも、正直に、懸命に生きる“スーホ”の美しさ、けなげさ。 命を助けられ、大切に育てられた恩を忘れず、最後まで忠誠を尽くそうとする白い馬の心の美しさ。二人をつなぐ深い愛情…。横暴で非人間的な殿様によって踏みにじられる善良な人々の悲しみや悔しさが、心を打ちます。
少し難しいように思われるかもしれませんが、純粋で素直な心を持っている子どものうちだからこそ、こうした絵本にも親しんで欲しいと思います。