絵本紹介絵本紹介

ももいろのきりん(年長)

ももいろのきりん(年長)

文 中川 李枝子     
絵 中川 宗弥 
福音館書店

あらすじ: “るるこ”は、 世界一強くて世界一美しいキリンを作りました。すると、突然話し始め・・・

 ある日、お母さんからとても大きな桃色の紙をもらった“るるこ”は、 世界一強くて世界一美しいキリンを作り、“キリカ”と命名しました。クレヨンで特別大きな目を2つ、特別大きな口を1つ書くと、突然“キリカ”が話し始め、二人はすぐに仲良しになりました。
その晩雨が降り、翌朝になると、大きすぎて部屋に入らないために外に出しておいた“キリカ”の首が、無残な姿になっていました。雨粒で濡れて垂れ下がり、色もすっかりあせていたのです。さっそく乾かし、首はまっすぐ立ちますが、色はどうにもなりません。どうしたものかと思っていると、遠くを見ていた“キリカ”が、「向こうの山のてっぺんに、とってもきれいな木が見える。桃色のクレヨンがどっさりなっている」と言い出しました。
二人はさっそくクレヨンの木を見に出かけ、色あせた動物達と出会います。クレヨンの木を一人占めしているオレンジ熊の存在を訴える彼らの言葉を聞いた“キリカ”は憤慨し、威張るオレンジ熊をやっつけてしまいました。
クレヨンの木のクレヨンは、水に濡れても大丈夫という特別なクレヨンでした。それが今や、誰でも自由に使うことが出来るようになったのです。色あせた動物達は喜んで、さっそく自分を好きな色で塗り始めました。“るるこ”も、クレヨンの木のクレヨンを使って、“キリカ” を塗ってやり、“キリカ”はまたまた世界一きれいなキリンになりました。
動物達はお礼にと、描いた物がすべて本物になる、不思議な画用紙をくれました。それはとても大きな画用紙でした。“るるこ”はその画用紙に、世界一長い首がちゃんと納まるステキな家を描き、“キリカ” にプレゼントしたのでした。

評:子どもの夢がそのままお話になった楽しい本です。

自分で作ったキリンが人格を持って動き出す。子どもの夢がそのままお話になった楽しい本です。その上、そのキリンと一緒に冒険し、悪いオレンジ熊をやっつけるというのですから、もう言うことはありません。子ども達は夢中になって、先を読んでとせがむことでしょう。悪者を退治したお礼にもらうのが、描いた物が本物になる画用紙というのもステキです。本当にそんな画用紙があったら、どんなにいいだろうと、子ども達はうらやましく思うはずです。
実は、この絵本は、今回ご紹介した100冊の中で、最も長いお話です。絵柄がシンプルな上にボリュームも少ないので、絵本というより、 童話といった趣きです。
お話はとてもおもしろいのですが、とにかく長いので、読み聞かせに慣れている子でないと、楽しむのは難しいかもしれません。また、 絵を見ながらでないと楽しめない子には、この手の絵本はまだ無理です。無理強いすると、逆効果にもなりかねません。お子さんの様子を見ながら判断していただければと思います。