なぜジャックなのか?
パンフレット請求 教室の時間割・料金表
私立小学校を検索しよう!

学校訪問

みんなキラキラ

理事・吉岡俊樹が、保護者の方の視点に立って学校・先生・児童たちの魅力をお伝えするページです。いろいろな学校のことをもっと知りたいというご要望にお応えして、新設校や今注目されている学校を訪問し、先生方にお話を伺います。

第4回

桐光学園小学校
(取材:2009年6月)

斎藤滋 校長

学校法人桐光学園 桐光学園小学校
1965(昭和40)年、創設者の小塚光治が神奈川県多摩区に寺尾みどり幼稚園を設立。1972年、学校法人 桐光学園が認可される。1978年、男子校として高校学校を開校。1982年、男子校として中学校を併設。1991年、中学・高校に女子部を開設。1996年、小学校を開校。
http://www.tokoes.com/

—御校の学校説明会には多くの保護者が参加されていました。最寄り駅である栗平駅から学校までは大人の足で20分弱の道のりで、子どもたちにとっても結構な距離ですが、3年生まではスクールバスの送迎があると伺っています。

斎藤:はい。3年生まではバスでの送迎があります。当初は1~2年生のみバス送迎を行うことを考えていましたが、開校後一期生が3年生になった際、バス送迎を1年間延ばしてほしいという要望が多数の保護者から出たのです。そこで4年生からは徒歩ということを条件に1年延長して3年生までバスでの送迎になりました。

—駅からはアップダウンが多い道ですから、子どもたちにとって、いい運動になりますね。

斎藤:徒歩通学になる4年生の4月は、みんな真っ赤な顔をしてふぅふぅ言いながら歩いていますが、毎日、駅からの通学路だけで3キロほど歩いているわけですから、慣れるにつれてやはり足腰が鍛えられるのでしょう。4年生と3年生は兄弟学年なので一緒に遠足に行くのですが、そこで気がつくのは、4年生は歩行スヒードがとても速くなっているということです。

—兄弟学年制度の狙いについてもう少し説明していただけますか。

斎藤:この制度を設けたのは今から3年ほど前で、6年生と1年生、5年生と2年生、3年生と4年生がそれぞれ一緒に行動する機会を設けました。というのも1996年に小学校が開校しまして、一期生として入学した1年生たちはなんでも自分たちでやってきたんですね。音楽会にお母さま方が来るといえば、自分たちで全部イスを運んで観客席をつくる。まるでアリの行列のようにせっせとイスを運んでいる姿は、とても愛らしく、また頼もしいものでした。開校当初は子どもたちのなかに「自分たちの学校を、自分たちでつくるんだ」という意識があり、とてもいいことだと感じました。けれどもその後、1年生から6年生までみんな揃った学校になって、そういった意識がだんだんと薄れてきたのです。
とはいえ「何でも自分たちでやる」というのが本来の子どもらしい姿かと問われれば疑問はあります。そこで、一期生・二期生が自然にやっていたように、低学年のときは上のお兄さん・お姉さんに甘え、成長に応じてそれを年下の子にお返ししていく、という形にしたらどうかというアイディアが教員から出ました。それが兄弟学年制度です。

—通学路ひとつとってもわかりますが、御校の環境は自然に恵まれ、敷地も広々としています。総合学習の時間には農園活動を行っているとのことですが、これにはどのような目的がありますか。

斎藤:土をいじって作物を育てていくという経験を通して、対人関係からだけでは得ることのできないものを習得していると思います。子どもたちが農園にいる姿を見ていると、大人の方まで心が洗われるといいますか、感動を覚えます。たとえば、野菜のタネを植えるとき「ちゃんと育ってね」と声をかけている子が多いんです。基本的には作物の世話は当番制なんですが、自分で植えた作物を世話しようという気持ちが自然に芽生え、休み時間を削っても水やりに行く子もいます。今の時期はちょうどキュウリが実をつけています。10本実がなると、スライスにして児童全員に一切れずつ行きわたりますので、僕が味噌を用意して切っておきます。キュウリを植え、育てて観察し、そして収穫。やはり自分たちで育てた作物にはいろいろな思い入れがありますから、10分くらいずっと口の中で噛んで、味なんかとっくになくなっているのにそれでも噛み続けている子もいます。
当校の校訓のキーワードは、「意志・表現・感謝」ですが、農園活動を通して、「責任をもって世話をする」という気持ちが育まれますし、自分たちでタネを蒔くときは自然に言葉が出てきます。また収穫した作物を食べて、「おいしい」と思えば自然に感謝の気持ちが出てきます。まさに農園活動は教訓を体現するものだと思っています。卒業した子どもたちの思い出話の中にも「農園でこうだったよね」という話題が出てきますし、桐光の中学・高校生は「今、何をつくっているの?」と小学生に声をかけてくれます。

—中学・高校は男女別学制ですね。小学校高学年の児童には中学からは男女別学だということを意識して生活指導などをされていますか。

斎藤:いいえ。小学校の段階では別学を意識してはいません。別学に関しては当初の導入の際にいろいろな議論があったことと思いますが、「男子と女子では物ごとの理解の仕方や物ごとへの取り組み方の手順が違うので、なんでも一緒に学べばいいというわけではない」と、中・高の教職員が小学生の保護者の方に説明しています。もちろん一緒に活動する方がプラスになる場合もありますので、文科系のクラブ活動などはほとんど男・女混合です。子どもたちも別学については当然のことのように受け入れてくれています。

—受験のことについてお伺いします。昨年の受験では出願者数が256名と一昨年に比べて減少しました。これは受験日の変更に伴うものと思いますが、どのようなお考えで受験日程の変更をなさったのでしょうか。

斎藤:正直に言えば、これまで受験日を他校とずらすことで、当校が第一志望でない方の受験も甘んじて受け入れてきたという経緯があります。ありがたいことに、72名の募集に対して出願者数も300名を超え、07年に実施した試験では400名近くの出願をいただくまでになりました。けれども、これが本当の姿だろうかという思いもありました。受かったお子さんの親御さんからも「本当はここが第一志望じゃなかったのよ」という残念な言葉が聞こえてきたこともありました。第一志望校受験の予行演習のような形で受験されるのではなく、第一志望校という同じ土俵で勝負したいという思いがあり、受験日程をずらした結果、出願者数が減ったというのが実情です。また昨年から保護者面接を復活させましたので、それも受験者減少の要因のひとつになったかもしれません。

—保護者面接の復活にはどのような理由があるのですか?

斎藤:開校当初は保護者面接を行っていたのですが、保護者の面接結果がお子さんの合否に影響することはほとんどありませんでしたので、2年で止めたんです。けれども、他校の先生方から「是非やってみたら」とのお薦めの言葉を何度かいただきましたので、去年から両親面接を採り入れました。たった15分ですが、これは私にとって、そしてまた当校の職員にとって得るものが大きいと思いました。小学校教育への期待など保護者の方の意見を直接聞くことは教員の成長にとって非常にいい機会です。復活させてよかったと思っています。

—受験のテクニカルな話になりますが、御校の受験では数量問題が出題されていませんね。

斎藤:基本的には小学校に入ってから勉強する内容を幼稚園の子どもに求めてはいけないという考え方があります。文字を読んだり、文字を書いたりすることも求めませんし、数を数えたりすることは求めません。とはいっても微妙なところはあります。たとえば、スズメのいる絵を提示して「スズメは何羽いますか?」といえば数量の問題になりますが、ふたつの図を比較させて「スズメが多いのはどちらの図ですか?」という問題を出すと、子どもはちゃんと数えています(笑)。幼稚園で数量はまだ習わないといっても、お父さんやお母さんとお風呂に入って10まで数えるというようなことをそれぞれの家庭でやっていることはわかっているんですが、基本的には話をきちんと聞くことができる、というのが大切だと思っています。

—習っていないことを受験で問うのではなく、基本の部分を見るわけですね。

斎藤:実は、去年までは置き換えの問題も出題していました。でも、今年からは置き換えの問題は出題しません。なぜかというと、お母さま方の間で「桐光学園の入試はスピード勝負よ」といわれ、子どもが泣いても嫌がってもビシビシやるようになったということが耳に入っているんです。問題を正確にかつ速く解けるという能力は重要ですし、その部分を判定したいと思っていましたが、なんでもかんでも子どもに速さを求めればいいというものではありません。たとえば幼稚園の段階で着替えが多少遅い子でも、小学校に入って2週間もすればだんだんと慣れて速くなってきます。スピードを競わせるのだけが入試だと思われてしまったら、それは違うと思うのです。ですから「今年行われる受験では置き換えは出しません」と親御さんに伝えています。今秋の受験に向けて準備している子どもたちは置き換えの恐怖から解放されたと思います。

—現状に則して柔軟に出題内容を見直しているわけですね。基本的な質問になりますが、斎藤校長は、御校の子どもたちをどのように教育していきたいとお考えでしょうか。

斎藤:誤解を恐れずにいえば、勉強の成績だけを伸ばす教育というのは、それほど難しくはないんです。学習塾のような形で詰め込み教育をすればいいのですから。しかし小学生としての生活を楽しみながら、中学・高校でどんどんと伸びていく子どもたちを育てていくことがこの学校の使命だと思います。

—勉強以外の部分を育てていくということでしょうか?

斎藤:小学校受験の準備でもたぶん同じ経験をなさっているのではないかと思いますが、まだ子どもが小さいと、親や教師が子どもをがんばらせることで、勉強の方はある程度伸びるんですね。実際、親や教師の言うことをよく聞いて、寄り道もせずにひたすら勉強をがんばる子というのをたくさん見てきました。確かに小学校では成績がいい。けれど、その子たちが中学・高校に上がると「あれ? あの子はどこに行ったんだろう」というくらい存在感がなくなってしまうんです。
そのように勉強だけをがんばってきた子というのは、なにかつまずきがあると弱いんです。息切れしてしまって後が続かない。そういう子どもたちを見てきましたので「僕は子どもをダメにすることに力を貸してしまったんじゃないだろうか」と自責の念にからたこともありました。

—けれど、基礎学力の向上は重要ですよね。

斎藤:もちろん、基礎学力を養うことは必須です。例をあげると、2年生の終盤の段階で掛け算の九九ができない子を一人たりとも出してはいけません。九九ができなければ、その子の算数の能力はそれ以上伸びなくなってしまうからです。ですから、そういう子がでないように学校と家庭とで協力し、学習したものが定着するようにいろんな時間で復習するようにしていく。そのように基本学力を定着させることは重要ですが、「もっと勉強をさせよう」と詰め込みでやらせると、多くの子が上に進んでから息切れしてしまうんです。もっと勉強をしたい子にはいくらでも勉強できる環境をつくると同時に、将来息切れする子がでることのないように、自発的な心、なにかに積極的に取り組む心を育てるようにしています。というのも、中学・高校で伸びる子、がんばる子というのは、クラブ活動や生徒会活動など自発的に取り組むなにかをもっている子が非常に多いからです。

—やらせるのではなく、やりたいと思う心を育てるということですね。それをどのような形で保護者の方々と共有していますか。

斎藤:学校の行事というのは、子どもたちが自主性や協調性、そして校訓の三つの心を育むように考えていますので、それぞれの行事がどのような目的で行うのかということを「学年だより」をはじめ、さまざまな機会を捉えて保護者の方に学校の意向を伝えています。ただ、それがうまく保護者の方に伝わっているかと言われると難しいところです。さまざまな行事の前に親御さんが子どもに「〇〇の行事はこういうことが目標だよね」と話していただければ、学校と家庭がひとつになって子どもを指導していけますので、こんなに嬉しいことはありません。 桐光の小学校に子どもを入れる保護者の方は、小学校の成績さえ良ければいいと考えているわけではないと思います。やはり、桐光の中学・高校と進ませ、希望の大学に進めるように考えていらっしゃると思いますので、当校のよさを充分に吸収し、上に行ってからもどんどん伸びる子たちをご家庭と心を一つにして育てていく。それが私の使命だと思っています。

取材を終えて

「真面目、誠実、直球勝負、外見より中身」ー 今回の取材を終えて、思い浮かんだ言葉です。先生たちは勿論のこと、校舎も近年の新設校に比べると決して豪華ではないのですが、広く効率よく作られています。子供達のために必要なことは過不足なく取り入れるという信念が感じ取れました。今回の取材で、校長先生は入試日の変更や考査に数量の分野が出題されない理由など、踏み込んだ質問にも率直にお答えくださいました。その真摯な姿勢に感銘を受けました。
催事・行事への力の入れ方にも驚きました。進学校にありがちな「勉強以外はお付き合い程度」という感じが全くせず、久しぶりに文武両道という言葉が似合う学校だと感じました。(吉岡俊樹)

写真で紹介

3年生以降の総合学習ではWordでの文書づくりからPower Pointを使ったプレゼンテーションまでを学ぶ。

3名の先生が授業を担当する音楽の時間。英語の歌詞を採り入れた合唱が行われていた。

「いつでも辞書がひけるように」と廊下に置かれた国語辞典。

自分の身体の動きを言葉で表現し、人に伝える——というように運動と表現を連動させたユニークな「表現」の授業。

斜面に設けられた農園。野菜や果物を育てることを通して校訓のキーワードである「意志・表現・感謝」の心を学ぶ。

全学年、担任、副担任の2名が各クラスを担当する。