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学校訪問

みんなキラキラ

理事・吉岡俊樹が、保護者の方の視点に立って学校・先生・児童たちの魅力をお伝えするページです。いろいろな学校のことをもっと知りたいというご要望にお応えして、新設校や今注目されている学校を訪問し、先生方にお話を伺います。

第3回

新渡戸文化小学校(旧東京文化小学校)
(取材:2008年7月)

熊谷勝仁 校長

新渡戸文化小学校(旧東京文化小学校)
1927(昭和2)年、森本厚吉が「女子文化高等学院」(現・東京文化短期大学)を設立、初代校長に新渡戸稲造を迎える。1948(昭和23)年、東京文化小学校を創立。2008(平成20)年4月、学校法人名を東京文化学園から新渡戸文化学園に改称した。
http://www.el.nitobebunka.ac.jp/

平成22年度(2010年4月)より同校の校舎は現在の杉並区和田から中野区本町に移転します。これに伴い、新1年生からは1クラス25~30名の2クラスで学年が編成されます。また同年度から校名が「新渡戸文化小学校」に改称されます。詳細は http://el.tokyobunka.ac.jp/news/「東京文化小学校の新たな取り組み」をご覧ください。(2009年年7月)

—御校に在学しているジャックの卒業生やご父兄から、「子どもと先生の絆が強く、個性的な学校」と伺っています。さっそくですが、御校の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。

熊谷:一言でいえば、『大きな夢を育てる小さな学校』ということです。私が校長に就任したのは今年の4月からですが、それまでの福田前校長時代に何度もこの学校を訪れていました。休み時間に校長室に遊びにきて、自由に絵を書いたり質問したりする児童の氏名はもちろん、その子たち一人ひとりのあだ名まで校長が知っているということは本当にすばらしいと感じました。これは限られた生徒数だからこそできることで、当校の伝統である「小さな学校」の良さであると考えています。

—熊谷校長はこれまで公立校の校長を歴任されてこられたと伺っていますが、公立校との一番の違いはどのような点にありますか。

熊谷:これも当校の校風に関係することですが、当校の生徒は総じて温和です。ギスギスしたところがないんです。というのも、文化小学校はキリスト教の精神を学校生活の基本においています。毎週月曜日には礼拝の時間もありますし、給食の前には感謝の言葉を捧げてから食事をいただきます。そういう習慣が身についているから、対立して激昂するという生徒が見られないのだと思います。

—入試の際にも性格面を重視しているのでしょうか。

熊谷:そうですね。入試では教師全員が子どもたちの行動をみます。お子さんがグループ内で無意識にとる行動のなかには、日常のご家庭の環境というものが自ずと出てきます。本校の入学試験では社会性、すなわち友だちと一緒に「仲良く楽しく」学校生活を送れるかどうか――という点にポイントが置かれます。

—1学年40名が募集定員ですが、うち東京文化幼稚園からの推薦者は何名くらいですか。

熊谷:幼稚園から上がってくる子は10名程度です。内部推薦があっても通常の入試と同様の判断をしていますから、稀にですが小学校への入学をお断りしたケースもあったと聞いています。

—1学年40名の単学級ということはクラス替えがありませんから、6年間同じ級友と学校生活を送ることになります。児童同士のトラブル、あるいは保護者同士のトラブルに対してどのように対処しているのでしょう。

熊谷:お話したように当校の児童は総じて温和ですが、それでも子ども同士のケンカやいさかいが一切ないというわけではありません。そのときはまず、子どもたち同士で解決の方法をみつけるように見守ります。対立の解決法を自らみつけることは、子どもたちが社会の中で生きていく上で必要な力となるからです。また当校の児童は学年を超えた交流がありますから、年長の子どもが低学年の子どものケンカを仲裁する光景も見られます。だいたいの問題はこれで解決しますが、さらにこじれた場合は、教師が解決に向けて手を貸しますし、保護者の協力が必要になる場合には、保護者の方にも協力していただきます。
そのときに申し上げるのは、「どの子もわが子」という考え方です。親御さんたちがみんな協力して、わが子だけでなく、周囲のお子さんたちを一緒に育てていこうという気持ちを持つこと。東京文化小学校全体が家族であるという気持ちを持って、相手のお子さんを見守り育てることが小さな学校では重要になってきます。

—なるほど。学年を超えた交流がどのようなものであるか、具体的に説明していただけますか。

熊谷:これは「縦割り活動」と呼んでいるものですが、当校では1年生から6年生までの全学年、あるいは4・5・6年の3学年、1・2年の2学年など、同学年だけではなく学年を超えたグループを編成してさまざまな活動をしています。
たとえば「縦割り生活班」というグループ分けは、1年生から6年生までのすべての児童を全20班に分け、班ごとに図書室・図工室など掃除する場所を分担させています。そのことによって、6年生は下級生の面倒を見るという責任感が生まれますし、1年生は上級生の指示を仰ぎながら自分の責任を果たすことを覚えます。
このように毎日、学年を超えた交流がありますので、文化の子どもたちには姉妹・兄弟のようなつながりが生まれます。

—この縦割り活動はどのような意図から生まれたのでしょうか。

朝倉(教頭):かつては地域社会のなかにいても、たとえば児童公園に遊びに行けば、自分より年上の子どもがいて、一緒に遊ぶことができ、そのなかから多くのことを学びました。けれどもだんだんとそういう場が失われ、年齢の違う子ども同士が触れ合う機会が減ってきました。そこで学校のなかで、「おにいちゃん・おねえちゃん」と接する機会を残そうということになり「縦割り」が提唱されたのです。1年から6年までの縦割り活動の基本になっているのは、毎日の掃除です。通常、掃除は放課後に行うことが多いと思いますが、当校の場合は、1年生~6年生が班となり一緒に行うので、給食を食べ、昼休みの遊びを終えた後の1時~1時20分までを掃除の時間にしています。低学年の児童は、その後帰宅しますし、高学年の子は掃除の後、教室に戻って授業を続けます。
このようにほとんど毎日他学年の子どもが顔を合わせていますから、学年合同で行う夏のキャンプや、5~6年の児童が一緒に学ぶ文化選択講座でも子どもたちは違和感なく他の学年の子たちと接していますし、姉妹・兄弟のような絆が自然に生まれるのだと思います。

—縦割り活動は子どもの対話能力を磨く上でも貴重な試みだと思います。ところで、御校の中学は女子校で、男子は中学受験をするお子さんがほとんどだと思いますが、受験に向けたカリキュラムなどはあるのでしょうか。

熊谷:基本的に当校は受験校ではありませんので、受験に向けた特別なカリキュラムは設けていません。けれども、一人ひとりの「大きな夢」をかなえるための進路指導は教師がバックアップします。そしてまた、「自ら学ぼうとする意欲」を伸ばすために低学年からその子にあった学習方法を指導していきます。受験のために学校の行事を休むようなことは認められませんが、受験直前にあわてることのないよう計画性をもって準備をする必要性などを細やかにアドバイスしています。
また当校では子どもの意志で選択するものが行事にも折々に触れて出てきます。たとえば、4~6年の夏のキャンプ。高原でテント生活をする「サバイバルキャンプ」、海の生活を体験する「とみうらキャンプ」、里山で地元の子どもたちと触れ合う「じょんのびキャンプ」。この3つのコースからどれに参加するか子どもたち自らに決めてもらいます。もちろん担任が相談にのったりアドバイスを与えることもありますが、自分自身でやりたいこと、挑戦したいものをみつけ、それに楽しみながら取り組む姿勢を受験までに身につけてもらう体制を整えています。

—御校のホームページには毎日の給食の写真が掲示されています。安心・安全・愛情という3つの「あ」のある手作りの給食を学校説明会でいただきました。学校説明会で給食を出すというアイディアは新鮮で、また給食が大変おいしいかったのがとても印象的でした。

熊谷:東京文化の給食は、無添加食材であることはもちろんのこと、季節の食材を吟味し食材もほとんど国産のものを選んで、毎日15品目の食材を採り入れています。メニューを考えるのは東京文化短期大学の卒業生である栄養士の方で、子どもたちの顔を思い浮かべながら、つくってくれています。もちろん全部手づくりで、コロッケやハンバーグなどの主菜やゼリーなどのデザートもすべてスクール・メイドです。食物アレルギーのお子さんがいれば、アレルゲンを取り除いたメニューをそのお子さんのために用意してくれます。
給食の写真をとってホームページにアップしているのは情報委員の子、2名で、このアイディアも自主的に出たものです。これには私も驚きました。

—児童同士、あるいは児童と先生がたの絆が強い御校ですが、保護者の方は東京文化のどのような点をもっとも評価しているとお考えでしょうか。

熊谷:やはり「楽しく仲良く」学校生活を送れる子、友だちとの人間関係をうまく築くことができ、「お互いに助け合う」という、社会性を身につけるという部分だと思います。これは生きる力につながります。
また本校に来て如実に感じたのは、保護者の方々の惜しみない協力体制です。入り口のエントランスにある花壇の手入れやホームページの作成、果ては学校紹介ビデオの制作にいたるまで、在校生の保護者だけでなく、卒業生の保護者の方までもが率先して協力してくださるのです。「どの子もわが子」の精神で在校生を暖かく見守ってくれている保護者の方たちが、「東京文化家族」を支えてくれているのだと思います。

取材を終えて

「どの子も我が子」。久しぶりに聞いたような気がします。文化小学校には、いじめや家庭同士のトラブル、先生と保護者の軋轢などは無縁なのだと感じました。先生の視線が学級全員に向けられるのは当然ですが、保護者の視線もまた全員に向けられているところが、この学校の最大の魅力だと思います。
学校説明会が楽しいことも特徴の一つです。学校紹介のビデオがドラマ仕立てなのに驚き、そのビデオを卒業生のお父様が制作されたと聞き、またビックリ。「手厚い」「手作り」「温かい」そんな言葉が次々に浮かんでくる学校でした。(吉岡俊樹)

写真で紹介

机の配置を決めるのは、担任の先生と児童たち。学年によって机の配置はマチマチだけど、おいしそうに給食を食べる笑顔は同じ。

情報委員の生徒が毎日の献立を撮影してホームページにアップ。 コンピュータの操作は3年生からはじめる授業でマスターしたという。

全校生徒を20班に分けた「縦割り生活班」の掃除分担表。あそびの週(掃除分担なし)にあたることもある。

校舎のモール(廊下部分)を使って、児童の作品を展示する「子供美術館」。

休み時間は竹馬や一輪車に乗って中庭でひとあそび。 中庭からは自由に校長室に出入りできる。